自己破産は、借主が支払不能の状態にある場合の借金整理法です。自己破産の申し立てを裁判所にすることにより破産手続開始の決定をえて、免責許可の決定が得られれば租税などの一部を除いて借金が免除されます。
一部の財産を除き、大半の財産を整理する代わりに借金を棒引きにしてくれます。国が再起のチャンスを提供し、立ち直ってもらうためにつくられた制度と考えてください。
借金で首が回らなくなった人をそのまま放置すればどういうことになるでしょう。どんなに働いても一生借金奴隷として生きていくしかない、将来を悲観して自殺まで考える人が出て、多くの悲劇も起きました。そうならないように支払不能の債務者を救済するために国が用意してくれているものが、自己破産の手続です。
自己破産は人間性そのもの否定するようなマイナスイメージを持つ方が多くいます。
以下の不安や心配などです。
このような不安や心配ごとを払しょくしなければ、なかなか前に踏み出せません。誤解によることが多いのでそのような懸念がないことをまとめてみます。また自己破産のデメリットについても触れてみます。
- 債権者は、債務者が自己破産したからといって家族に支払請求はできません。
- 家族があなたに代わって支払う法的義務はありません。
- 家族の所有する不動産や自動車などの財産を取られることはありません。
- 子供の進学・就職・結婚に影響がでることはありません。
- 近所に知られることはまずありません。
- あなたや家族が会社を退職させられることはありません。
- 給料が差押えられることはありません。
- 手続後の給与などの財産は自由に使えます。
- 日常生活に必要な家財道具・生活必需品を手放す必要はありません。
- 戸籍や住民票に記載されることはありません。
- 自己破産しても年金や公的扶助は受けられます。
- 選挙権がなくなることはありません。
自己破産のメリットはいうまでもなく借金が帳消しになることですが、以下デメリットをご紹介いたします。
- 不動産・自動車など高額な財産は処分されます。
- ただし、現金は99万円まで、また家具など生活必需品は保有できます。
- 職業・資格に影響がでること。
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資格を必要とする一定の職種につけないことがあります。弁護士・公認会計士・公証人・司法書士・税理士・弁理士・宅地建物取引主任者などが制限を受けます。
お金を扱う業種として、保険外交員、警備員、卸売業者、質屋なども制限を受けます。普通の公務員、サラリーマンになることは何ら支障ありません。
会社の取締役・監査役は、かつて破産者となれば退任する必要がありましたが、平成18年の新会社法の施行により退任事由ではなくなりました。
- 官報・破産者名簿に記載される。
- 官報は政府発行の機関誌で一般人が目にすることはあまりありません。
破産者名簿とは市区町村役場にある名簿で、破産宣告を受けているかいないかだけを記載する名簿です。一般に公開されてはいません。自己破産の申立から免責を受けるまでの6ヶ月間位名簿に載りますが、免責を受ければ抹消されます。
借金の返済がどうにもできなくなり、自己破産の決意をしたら自分の住んでいる住所を管轄する地方裁判所に破産の申立てをすることになります。
自己破産申立てのうち、約90%が同時廃止事件(めぼしい財産をもっていない方が取るべき自己破産手続のこと)です。この同時廃止事件手続のおおまかな流れを見て行きましょう。
- 債務整理の相談により支払不能と判断し、自己破産手続の方針を立てます。債権者から取引履歴を取り寄せ、すべての債務の調査が終了し、債務額が確定した段階で自己破産手続を選択します。
- 給与明細書、源泉徴収票、賃貸借契約書の写し、預貯金通帳の写し、車検証の写し、生命保険金証書又は解約返戻金、財産目録、家計全体の状況表、不動産があれば登記簿謄本・固定資産評価証明書、住民票の写しなどを収集し、財産目録、債権者一覧表、陳述書などを作成する準備をします。
- 収集した書類を基に司法書士が申立書その他必要書類を作成します。
- 司法書士と申立て日を打ち合わせて、作成した申立書一式を裁判所へ提出します。
- 申立てから1~2ヶ月月後、裁判所へ行くことになります。裁判官から10分程度支払不能になった理由や状況について質問を受けます。
- 破産審尋の日から1~2ヶ月後、再び裁判所へ行きます。免責不許可事由がないかなど10分程度簡単な質問をされます。
- 免責審尋の約1ヵ月後、免責が確定します。確定した時点で借金全額が免除され、自己破産の申立てによる不利益(職業の制限や破産者名簿への記載など)についてもなくなります。
自己破産手続に要する期間は、まず申立てまでの準備に3~6ヶ月、申立て後すべての手続が終了する免責の決定が出るまでに5~6ヶ月ほど、全体として8ヶ月から1年間くらいかかると見てください。
自己破産手続きを選択するわけですから、自己破産手続きの費用が一括で支払える人は稀です。当事務所では、自己破産手続きを依頼された月から、司法書士への報酬及び裁判所へ支払う費用を分割で預託していただくこととしています。
司法書士報酬は、債権者への受任通知の発送、取引履歴取寄せ、利息制限法利率による引き直し計算、債務額の確定作業、自己破産・免責許可申立書、その他必要書面の作成、裁判所への同行費用などです。
なお、管財事件手続(少額管財)となりますと、裁判所によって費用が異なりますが、20万円くらいの費用が別途かかります。
自己破産に係るその他の事項について『自己破産についてのQ&A』を作成していますので、そちらの方も参照してください。
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